2021年11月29日月曜日

蓮見重彦『見るレッスン』映画史特別講義 光文社新書 2020

映画研究者の蓮見が書いた映画論。題名から連想されるような編年体の映画史の本ではない。だから特別講義としてあるのか。内容(章)は次の通り。

現代ハリウッドの希望/日本映画 第三の黄金期/映画の誕生/映画はドキュメンタリーから始まった/ヌーベル・バーグとは何だったのか?/映画の裏方たち/映画とは何か

冒頭に世間で話題になっているような映画ばかりみるのは良くないとある。そういう人もいるだろう。しかしそんな人はこんな本を読まない気がする。映画の見方では、映画の中に驚くような場面がある、それに注目すべきとある。もちろん驚くような場面とは、見巧者でなければ評価できないようなところを指すのであろう。

読んでいて類書と異なるのは、具体的な監督などの名を挙げ、いいとか悪いとかはっきり言っているところである。女の監督を結構取り上げており、ドキュメンタリーの小森はるか、小田香の二人の名は何度も挙げ、称賛というか絶賛している。一方で具体的な名を挙げ、こき下ろしている監督がある。はっきりとした物言いは望まれるが、理由が明示されていない場合がある。素人の映画ファンが好き嫌いを言っているのではない。専門家が活字で主張しているのである。理由がないのは理解できない。みんな具体的に名指しているかと思ったら、トリノで日本映画のシンポジウムがあった際、「特に名を秘す批評家の某氏がくだらないことを長々と述べ始めた。」(p.103)とあって、他の映画人がやめさせろと書いた紙が回ってきた、と笑っている。なぜこの批評家の名を秘すのか分からない。

今の日本には美形の女優がいないと書いてある。分からないでもないが、著者が考えるかつての美形女優を、順位をつけて書いてもらいたかった。

著者の言い分で納得賛成できたのは、映画は90分にしてもらいたい、過去の失われたとされる日本映画の発掘に評論家は努力すべき、という点である。

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