2021年11月25日木曜日

上野千鶴子『女の子はどう生きるか』岩波ジュニア新書 2021

フェミニスト、社会学者の上野が、女子からの質問に答える形の書である。若い女の子に対する人生相談のようなものと思って読みだした。しかしながらひどく失望した。本書の上野の回答は、今の日本が男中心で、女にとって不利な社会である、その糾弾に終始しているからである。確かに今は昔ほどでないにしても、女にとって不利で不満を感じさせる社会である。昔からの、偏見に過ぎない男優位の思考、慣行、制度等がまだ広く残り、改善していく必要がある。しかしここではどう生きるべきかという個人的な問題を聞いているわけである。社会への批判を聞かされて回答になっているのか。納得できるのか。男中心の社会を説明するため、上野はあまりにも古臭い例を持ち出して来る。例えば男と女の扱われ方の違いで次のように言う。

「昔の親はもっと露骨に子どもの中で投資の対象にする子どもとそうでない子どもを区別していました。尾頭つきの魚は家長と長男にしか食べさせないとか、息子にだけ高等教育を受けさせて娘には教育をつけないとか、兄弟を進学させるために姉や妹を奉公にだすとか」(p.39)

明治時代の話か?この後「びっくりしますね」と続けているが、読んでいてびっくりしてしまう。これを聞いて現代の若者の悩み解決につながるのか。今はいまだいいと思わせ、現状肯定させるつもりか。他の書でも上野は戦前生まれの社会観を持った男を持ち出してきて批判していた。かえって説得力に欠ける。令和の、夫婦共働きが普通の家庭では、当てはまらない例が結構ある。こんな社会批判、社会糾弾の本が高評価を受ける理由が分からない。もし女が評価しているなら、自分たちの不満を有名人が代弁してくれているので喜んでいるのか。この本で何を意図しているのか。自分のようなフェミニストを作るべく思想善導をしているのか。

つくづく思うになぜ上野は政治家にならないのか。女がゆえの、不利に通じているのである。政治の現場で女の地位が少しでも上がるよう、改善するよう、活動したらどうか。今の政治で旧来からの保守や革新、右と左の対立などは全く国民の関心にない。有権者の半数以上を占める女の地位の向上を掲げる政党なら存在意義があるのではないか。

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