成田空港開設反対闘争を描いた小川監督の記録映画の一。
建設予定地の三里塚には、反対派が建設妨害のため砦等をつくり、地元の住民や支援学生たちが長い間、公団、機動隊と衝突を繰り返した。
その戦いを反対派住民側から撮った記録映画の一つである。住民らの意見の開陳や、住むための穴を掘り、それを作った者が説明するといった場面が長く続く。
正直観ていて退屈に感じる。しかし最大の関心は、映画製作当時と現在ではどのように観方の違いが生じているのだろう、という点である。
本映画製作当時は非常に左翼的な風潮が強く、弱者が権力側に抵抗する姿勢を強く支援する感情は、国民に広く見られた。映画の冒頭で空港建設反対の演説として、今の日本では開発のために自然が破壊されているという言葉が出てくる。開発のために自然を破壊する、これは高度成長が始まって以来、常に行なわれてきた。それを住民が望んだからである。自然の破壊は日常茶飯であった。話題にならなかった。もちろん後になって、特に他地域の者から見れば、美しい自然を破壊してまでの必要はあったか、の疑問は出る。しかし再度述べれば当時はそれを推進したのである。
成田空港建設反対闘争が生じたわけは、昭和40年代になって日本も経済的に裕福になり、経済成長至上主義に疑問を呈するだけの余裕が出来たからである。
つくづく思ったのは、空港は結局建設されるわけで、このような反対闘争のただなかでなく、空港が建設される直前の反対派の姿を見たかった。反対しても建設された、しかし自分たちの闘争は意味があると思っていたのであろうか。そう思わないとやってられないという気分だったのだろう。ともかく権力に反対していれば正義という風潮が強かった時代である。
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