2020年7月25日土曜日

初等科国史 復刻版     昭和18年

国民学校(小学校)の5、6年用の歴史教科書(昭和18年)の復刻である。
戦時中の教科書であるから、現在とは大きく異なる内容である。
相違点は、まず天皇の記述がかなり多い、更に日本を肯定的に捉えているところである。

古事記等にある神話から始まる。その後の日本の歴史は天皇の偉業によるという。例えば、江戸時代など幕府支配で、皇室は実質的に何も政治に関与していなかったと理解していた。それが本書では何々天皇はこうやった、とか誰それの尊皇の行為などが書かれている。逆に明治以降で歴史に疎い自分のような者でさえ覚えている、自由民権運動や民撰議院設立建白書など何も書かれていない。
第二の日本を肯定的に捉える視点、これは戦後の書からは全くなくなった。
山中峯太郎という、戦前、少年向けの読み物で人気だった作家がいる。この山中の本を読んだら、日本賛美の精神で貫かれていて、驚いてしまった。日本という国はなんと美しく献身的な国でしょうと自己陶酔かと思わせる。あれと同じである。

現代の我々からすれば驚くべき内容である。しかしこのようなあり方が世界標準なのである。
そもそも歴史の教育を国家が施す、その理由は自分の国を好きにさせる、守る気にさせるためである。だから翻訳されている外国の教科書を見ればいい。みんなこの戦前の教科書のような立場で書かれている。
何十年か前、新聞で次のような記事を読んだ。国連かどこかに世界の少年たちを集めた。自分の国の紹介をさせた。みんな自分のお国自慢をする。ところが、日本の少年は日本をぼろくそに言って周りを驚かせたというか凍りつかせた。
この戦後教育の成果は自称良心的な教育者たちを狂喜させたであろう。自分の国を良く書けば夜郎自大の排外主義者を産み出すと思っている連中は自分がそうだからである。

最後に本書の最大の特徴を挙げておく。それは読みやすく面白いことである。正直自分は歴史の本は苦手である。なぜなら事実の羅列だけでちっとも面白くないからである。世の中に歴史ほどつまらない本が溢れている分野はなかろう。それでも売れるのは世に歴史好きが多いからである。
本書の内容は現在では受け入れられない。しかし本書のような読みやすく面白い(興味深い)歴史
書を望みたい。

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