貴族の娘エレーナがブルガリアの独立の闘士インサーロフに恋し、遺志を継ぐ。
当時のブルガリアはオスマン・トルコの支配下にあり、独立を目指す闘士インサーロフはモスクワで友人らにエレーナを紹介される。エレーナに恋する他の二人の男もいたが、エレーナはインサーロフに強く惹かれ、自分から恋を打ち明けるまでになる。
エレーナの両親は、婿の候補を用意していたが、親の知らないうちにエレーナとインサーロフは会い、結婚を誓っていた。エレーナもブルガリアの独立運動に身を投ずる決意をする。
真相を知った両親は驚愕するが、娘の決意は固く、二人はモスクワを発つ。その前からインサーロフは病気だった。ヴェネツィアで観光をし、仲間を待っていた。同志は到着したがインサーロフは死ぬ。モスクワの両親から戻って来いと連絡があった。エレーナは同志に自分は独立運動に参加したい旨告げ、その後の消息は不明になる。
その前夜とは農奴解放(1861)を指すが、直接農奴の解放を巡る話ではない。小説が書かれた頃は農奴解放直前であり、その他の制度の近代化も進められ、ロシヤが大きく変化していた時代である。その中でのエレーナの決意、行動を描く。
エレーナは自分の意志をあくまで通す強い女である。ツルゲーネフはこのような女を書きたかった。もちろん全くエレーナのような女は例外中の例外であった時代である。
以前、黒澤明の『わが青春に悔いなし』を観た後、本書を思い出してしまった。今回の読み直しでもそう思ったが、映画は直接の関係はないのだろうか。
佐々木彰訳、世界文学全集第38巻、講談社、1975
0 件のコメント:
コメントを投稿