2024年9月11日水曜日

伊丹十三+岸田秀『哺育器の中の大人』ちくま文庫 2011

本書は岸田を講師として、俳優、監督等の伊丹が生徒役で精神分析について質問していく講義録である。

講師、生徒役はそうなっているが、伊丹が非常に精神分析やフロイトその他の知識に詳しく、舌鋒鋭く岸田に迫っている。単に知識があるというのではなく、理解も優れている。だから極めて知的興奮に溢れた対談になっている。副題は「精神分析講義」となっているが、フロイトの解説本ではなく、岸田のいう「唯幻論」の講義である。本書は元々、朝日出版社が出したlecture booksというシリーズの一冊として1978年に出された。このシリーズはよく覚えている。装丁が印象的で表紙がしゃれた作りで、何より書名が凝っていた。この『哺育器の中の大人』もそうであろう。他にも『魂にメスはいらない』とか『僕がアインシュタインになる日』とか。優れた書名は売れるだろうし、記憶に残る。この本のあとがきで岸田はシリーズ中最も売れた本だと聞いたとある。

ところでこのちくま文庫本を見ると著者名がまず伊丹が来て、それから岸田になっている。元々講師が岸田だから以前の本では岸田+伊丹という並べ方であった。それを伊丹を先にしているのは何らかの判断がこの文庫本ではあったのだろう。その説明がない。やはり以前から変えたのなら、その理由を書いてほしい。

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