行動経済学は人間行動の不合理面に焦点を当て、その行動原理を解き明かそうとする。伝統的な経済学ではまずモデルとして(したがって現実性はさておき)合理的な人間(経済主体)行動の仮定から出発する。完全競争を仮定し、そこで合理的な経済主体の行動が効率的な結果をもたらすと示す。これはあくまでも「モデル」であり、短期的には成立しない。短期的には成立しなくとも長期的にはそちらの方向に向かうはずである。そうでないと長期的にも経済行動で合理的でないとなってしまうから。次に現実に近づけるため、仮定を一つずつ外していくとどうなっていくのかを見る。伝統的方法は演繹的と言える。抽象的な原理から出発して少しずつ現実に降りていくと言った感じである。
これに対し行動経済学は帰納的である。現実から出発し、一見非合理に見える行動でもやっている以上、なんらかの理由があるはずであり、それを探る。このような方向は、経済学が現実の問題を解決していく方法として期待されているからである。伝統的方法は研究がしつくされ、新しい方向が必要だった理由もあろう。
本書はアリエリー教授が学生(社会人)に対して行なった講義の記録で、事例を挙げて、学生とのやり取りがあって読んでいて分かりやすい。経済学の範疇に留まらない対象を扱っている。目次は次のとおり。
第1回 人間は“不合理”な存在である/第2回 あなたが“人に流される”理由/第3回 デート必勝法教えます!?―人々の感情をどう動かすか/第4回 ダイエット成功への道!―自分をコントロールする方法とは/第5回 “お金”の不思議な物語/第6回 私たちは何のために働くのか?―仕事のモチベーションを高める方法
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