ジュルジュ・サンドの30代前半の作品。イタリアの修道院を舞台にした異色作。物欲の世界から精神性の世界へという副題を持ち、宗教小説とはこういうものかと思わせる。
アンジュロという名の修道士の一人称小説で、修道院の生活を描く。もっとも小説の大部分はアンジェロが師と仰ぐ神父アレクシの回想である。
アレクシは俗化した修道院で、自ら信じる道を進もうとした。この修道院のかつての院長スピリディオンの残した意を知りたい。修道院の中での超常的な出来事を含め、かなり浮世離れした著述も多く、読み進めるのにしんどく思うようになる。ただ権力欲旺盛な神父と次期修道院長を争うこととなった経緯などは面白い。
アレクシはキリスト教、ユダヤ教の系譜だけが真実の教えでなく、その当時のキリスト教からは異端であったプラトン等のギリシャ思想、更にインドなどの思想さえ、重要だと説く。
小説の題材もそうだし、そもそも若いサンドがよく書けたと思う異色作である。
大野一道訳、ジョルジュ・サンドセレクション2、藤原書店、2004
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