ドイツの保養地を舞台に、かつての恋人との再会がもたらす顛末。
1862年、ロシヤの上流階級が多く集まっているバーデンバーデンにリトヴィーノフは来る。婚約者のタチヤーナが来るのを待っている。ロシヤ人たちは議論にふけり、リトヴィーノフはあまり議論に参加しない。その中でポトゥーギンというロシヤ人とは会話を交わす、というかその男の議論を聞く。ポトゥーギンは西欧派でロシヤの遅れた面を容赦なく指摘しけなす。
リトヴィーノフの昔に小説は移動する。落ちぶれた公爵家の令嬢イリーナを好きになり、相手からも好かれる。婚約する。両親はリトヴィーノフが平民なので歓迎しないが、娘が望んでいるのでやむを得ないと思っている。そのイリーナにペテルブルグの上流社会に出る機会が出来、イリーナの美は絶賛される。リトヴィーノフとの婚約は解消され、イリーナはペテルブルグに去る。
時代は元に戻り、バーデンの古城でリトヴィーノフはイリーナに再会する。既に高官の夫人である。イリーナはリトヴィーノフに謝りたいと言って接近してくる。当初は複雑な気持ちで接しているが、すっかり元の自分のようにイリーナに惹かれる。ぜひ一緒になりたい、今の婚約は捨ててもいい、相手のイリーナも夫を捨てて自分についてくると言う。リトヴィーノフはやって来た婚約者と別れる。イリーナに最後の手紙を出すが、その返事は一緒に行けない、というものであった。リトヴィーノフは一人で故郷のロシヤに帰る。帰りの汽車で流れる煙を見て凡ては煙だと呟く。故郷に帰り、領地を管理して数年たった。自分が捨てた、いいなづけに再会する。あのイリーナは今でも社交界で話題のようだ。
本書は当時のロシヤを批判し、その改革を論じると言った議論と恋愛小説の両面を持っている。ロシヤ議論の面では保守派、進歩派双方から批判されたそうだ。また恋愛小説と見ても主人公リトヴィーノフがあまり魅力的に描かれておらず、ツルゲーネフの小説としては面白みが少ないように思う。
神西清訳、河出版世界文学全集第9巻、昭和37年
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