成瀬巳喜男監督、PCL白黒映画。
千葉早智子の父親は、千葉と妻を残して自分は妾と田舎に住んでいる。東京に戻っている父親を千葉は見つけるが、自分の家に顔も見せない。
その父親を妾から取り戻しに行く千葉。千葉は山中で自分の義理の妹、弟に会う。しかもその妾に会うと善人で、千葉の父を家族から奪ったことを謝り、しかもこれまで父が送金してくれていたと思っていたオカネもその妾で密かに送っていたと知る。
千葉も当初の意気込みは失せるものの、自分達の家に父が戻って来て欲しいという気持ちは変わらない。父は帰りたくない、このままここにいたいと言う。
母が知り合いの仲人をつとめることとなり、どうしてもとりあえず父には帰ってもらう必要がある。父を連れて帰京し、仲人を勤めてもらう。その後、すぐに父は妾のいる田舎へ帰る。
あまりにも状況が現代と異なる。父親は金の採掘で一発当てようとしている山師である。女の方から払下げたい、とっとと出て行って欲しいダメ男としか見えない。
しかし映画では父親のことは話題ではない。千葉とその母、それに対する妾とその子供間の、父親の取り合いの話である。妾が善人として描かれているのに対し、本妻である千葉の母親は歌に現を抜かし、大して夫をかえりみない女である。
善人である妾に同情する千葉と同じく、観客も夫をほったらかしにする本妻より妾を良く思うであろう。ともかく夫に尽くすのはどちらか、という観点からの映画なのである。
時代を感じさせてしまう。大筋を借りて、寅さんシリーズの一つとして再映画化もされた。
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