木下恵介監督、松竹白黒映画。阪東妻三郎主演、他に森雅之、小林トシ子ら。
阪妻は一家の長として妻や子供たちに専制的に振る舞っている。子供たちは阪妻に言いたいことを言えず、おとなしい母と共に言いなりになっている。
長女の小林は好きでもない相手と父の言いつけで結婚することになっている。長男の森は父の建設会社に見切りをつけ、叔母のやっているオルゴール製造に従事したいと思っている。自分の希望は母に頼んで阪妻に言ってもらおうとする。面と向かっては阪妻に何も言えず、言われるがままである。
満員電車で阪妻が宇野重吉に無礼を働く。謝ろうともしない。その時同乗していた小林は後日、忘れ物を宇野の家に届ける。それ以来二人は相思の仲になる。
到頭、森は自分の計画を阪妻に打ち明ける。怒鳴なられ、森は家を出る。小林も父の決めた相手を振り、それを阪妻が知ると怒鳴られ同様に家を出る。最後は長年連れ添った妻も子供たちへの無理解、暴君的態度に愛想をつかし出る。
社長を勤めている建設会社は倒産する。家で手持ち無沙汰になっている阪妻は流石に少し弱気になる。オルゴール会社をやっている叔母のところへ相談役として迎えようと、妻や子供たちは画策する。
終戦後間もない時期で、いわゆる民主化の旋風が強かった頃。ただ封建的を糾弾するイデオロギー臭はあまり感じられなかった。木下恵介監督の所以か。木下監督の弟で、これを含めて木下映画の音楽を担当している木下忠司が次男役、やはり音楽家という役で出ている。
戦前は普通であったろう、暴君的ともいえる家長の父を描いた映画。現在このような父親はどの位いるであろうかと思ってしまった。
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