稲垣浩監督、日活京都作品、阪東妻三郎主演。
いわゆる江戸城明け渡しを描いた映画である。阪妻は(後の)勝海舟の役である。
映画は鳥羽伏見の戦いの後、明治初年に官軍が有名な歌を歌いながら東征するところから始まる。
幕府方では官軍と戦おうという意見が大勢だが、軍総裁の勝海舟は官軍との戦いを避け、無血開城を望んでいる。フランスの助けを借りて官軍対抗を主張する、志村喬演じる榎本らに向かい、国内勢同士で戦って何になる、真の敵はイギリス、フランス、ロシヤなど外国であると喝破する。この辺り映画制作当時の日本の情勢を反映する主張に見える。
映画は多くの反対派を押し切って、なんとか官軍の西郷と調停を試みようとする勝の苦労を描く。(西郷は映画に登場しない)反対の武士たちは勝を襲う。当時の武士の価値観、感覚は、あまりに今とは違いすぎて批判してもしょうがないかもしれないが、世界情勢に無知な者の馬鹿らしさを見せつけられている気になる。
この映画制作の年の暮から米英との戦争が始まり、20年まで続く。観ているうちに、終戦間際に徹底抗戦を叫んだ軍人たち、あくまで国体護持が至上価値で国民の不幸など全く頭になかった支配層、これは映画で徳川家への忠誠や将軍慶喜を気遣う侍たちと全く同じように思えてきた。
阪妻は重厚な名演をしている。
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