2024年7月2日火曜日

デュ・モーリア『青春は再び来らず』 I’ll be never young again 1941

主人公で語り手のディックは青年である。父親は高名な詩人で、家庭内では家父長的というか高圧的というか主人公など全く眼中にない、といった態度である。母親もただ父親に従っているだけ。こういった家庭に耐えられず、家を出る。

行く当てもする当てもない。橋から飛び込もうとしていた時、止めたのはジェイクという年長の男。以後、ジェイクと主人公は行動を共にする。船員として船に乗り込み、デンマーク、スカンジナビアなどに行く。フィヨルドで若い男女の群れと知り合う。そのうち一人の女に惹かれる。後にそれらとも別れる。ストックホルムではジェイクと主人公は酒場の喧嘩沙汰に巻き込まれる。逃げてまた船に乗る。随分いい加減な船で、嵐に会い沈没する。主人公のディックだけ助かった。

パリに行く。そこでへスタという若い女と知り合う。へスタは音楽の勉強をしている。へスタに惹かれた主人公は彼女と付き合うようになり、男女の関係になり、同棲する。へスタに結婚など馬鹿馬鹿しいといい、そんなつもりはないと告げる。主人公は劇や小説を書き、へスタは音楽の勉強などお互いの関心事に、同棲は支障が出てくる。へスタが自分以外の男女と付き合うのを主人公は嫌がる。主人公は執筆に没頭し、完成するとロンドンの出版社に売り込みに行く。へスタは待っている。ロンドンでは父親の作品を出していて、顔見知りの編集者のいる出版社に原稿を持ち込む。折しも父親の新作が評判になっていた。主人公は編集者からの連絡を待つ。ようやく来て会ってみると、断られた。傷心してパリに戻る。するとへスタがいない。服などもない。へスタは帰ってくる。もう主人公と別れると言う。別の男と一緒になる、主人公が相手にしてくれなかったからだ。主人公は止めるが手遅れである。一人残された後、イギリスから電報が来た。父親が死んだのである。イギリスに戻る。葬式後、出版社の編集者から銀行の勤め口を紹介される。そこに勤め、毎日規則正しい生活を送り、充実した人生と思えるようになる。

デュモーリアの長編第2作に当たる本小説は、正直なところ、読んでいる最中はどうも関心が低い。語り手の青年が自己中でガキっぽく面白くないと感じられる。へスタの相手となってからは、女から見ると若い男はこれほど鈍感で勝手な存在として映るのか、と思わせるのである。それでも全体を読み終えると一人の青年の成長小説、教養小説であり、読んで損したとは思わない。(大久保康雄訳、三笠書房、1972)

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