2024年7月25日木曜日

渡辺浩『日本思想史と現在』筑摩書房 2024

著者は東大教授を勤めた政治思想史家。以下が大まかな目次である。

Iその通念に異議を唱える/II日本思想史で考える/III面白い本をお勧めする/IV思想史を楽しむ/V丸山眞男を紹介する/VI挨拶と宣伝

著者のこれまでの論文や紹介文等の集成である。中には雑文のようなものもあり、著者の専門である思想史の観点から考察した論文もある。この中で個人的に面白いと思ったのはIV「思想史を楽しむ」にある「マックス・ヴェーバーに関する三つの疑問」である。三つの疑問とはまず、ウェーバーの儒教理解である。儒教は宗教と言えるかなどウェーバーの中国理解の問題、次はジェンダーで、ウェーバーは女をまともに評価していなかった、第三は妥協とユーモアと題され、ウェーバーの融通性の無さ、ユーモアの欠如を述べている。ウェーバーと言えばわが国ではマルクスと並ぶ権威とされていると思うが、そのウェーバーを俗な言い方をするとこてんこてんにやっつけている。ウェーバー信奉者の意見を聞きたいものだ。

あとIII「面白い本をお勧めする」の最後にある「おすすめ図書五冊」で、挙げられているのは、スピノザ『神学・政治論』、荻生徂徠『政談』、オースティン『高慢と偏見』、トクヴィル『アメリカのデモクラシー』、福沢諭吉『福翁自伝』である。勧める、勧めない訳書名も書いてある。このうちオースティン以外は、政治学者なら挙げておかしくない、


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