短篇集で収録作品は『いま見てはいけない』『真夜中になる前に』『ボーダーライン』『十字架の道』『第六の力』である。
『いま見てはいけない』はヴェネツィアが舞台。娘を亡くしている夫婦がヴェネツィアに観光で来る。そこで不思議な老女二人連れに会う。一人は盲目である。不思議な予言をする。妻がその得体の知れない女たちに関心を持つので夫は不快になる。息子が病気になったと知らせが来る。まず妻が帰る。その後夫が帰る時、船に妻とあの老女二人が乗って、反対方向に向かっているのを見る。夫は驚いて引き返す。妻は老女らにたぶらかされた、誘拐されたと思い込む。警察に捜索を依頼する。ところがイギリスに戻った妻から電話がかかってくる。自分が見間違いだったのか。あの老女らに聞くと未来のことだと。それは小説の最後で夫が殺人犯に殺される、その後という意味だった。
『真夜中になる前に』はギリシャの島に絵を描きに来た教師は、容貌魁偉な夫と不気味な妻に会う。その夫婦がしていたことが判明する。『ボーダーライン』は父親を亡くした若い娘が父親のかつての仲間の元軍人の住む島に訪れ、両親との関係を探ろうとする。『十字架の道』はエルサレムに聖地観光に来たイギリス人たちの話。思いがけず引率を任された若い牧師、新婚なのに仲が悪い夫婦、行動力盛んな子供などの行動が描かれる。『第六の力』は辺鄙の地にある研究所に派遣された若い科学者が人間のエネルギーを取り出す実験に巻き込まれる話。(務台夏子訳、創元推理文庫、2014)
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