2024年6月20日木曜日

三島由紀夫石原慎太郎全対話、中公文庫 2020年

表題にある二人の作家の対話集。昭和31年から昭和44年の暮れまで含む。

何といっても一番価値があるというか、重要な対談は最後の昭和44年「守るべきものの価値」である。ここで三島は翌年の市ヶ谷での自決の心情を述べている。もちろん対談時にはそんなことは三島以外は誰も知らず、市ヶ谷で呼びかけた自衛官たちから野次しか受けなかったと同様に、石原は理解できず戸惑っているというか呆れている。

最後のあとがきで、石原は三島を色々批判している。他には知られていない三島の醜態を報告し、かなり三島を滑稽な人物として描いている。三島は確かに目立ちたがり屋で人目を引きたい行動が多く、その政治思想にはついていけない人がほとんどだろう。それでも三島が戦後を代表する作家であることは変わりなく、五十年経っても読まれ評価されている。それに対して石原はどの程度の評価を受けているだろう。いまだに一番有名なのが処女作の『太陽の季節』のようである。この対談集の初めの対談で、三島が戦後十年間旗手だったのは自分だったが、新しい旗手を石原に見出したと言っている。その後の石原は創作活動で三島に伍する作家になったとは思えない。石原は容貌や体格では最も見栄えのするスポーツマンの作家で、剣道やボディビルなどでにせの身体を作っていた三島を馬鹿にしているようだ。石原といえば作家よりむしろ政治家として有名だろう。政治家として評価されているかどうか、政治に疎い自分は知らない。それにしても作家として大した業績がない石原でも何かもっともらしいことを言っているのかと思ってこの対談集を読んだのだが、期待を下回るものだった。

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