2024年6月29日土曜日

井上ひさし『日本語教室』新潮新書 2011

大学で行なった講義を著者の死後、まとめたもの。

表題にあるように現代日本語論なのだが、関係ない政治主張が多く出てくるのは疑問である。著者は広い意味での左翼であろう。それでアメリカの政策批判などをする。グローバリゼーションへの批判とか、日本に関しても外国人の言い分を引用し「沖縄、アイヌへの差別・・・従軍慰安婦・・・南京大虐殺」(p.116)をしたとして批判する形になっている。こんなことを日本語論で話すべき事柄か。

感心したところ、勉強になったところは日本語の発音は母音では「いえあおう」の順に音を出すところが、口の先から喉の奥の方になっているという。だから「い」の音はよく聞こえ、「う」の音は喉の奥で発音するから、よほど力を入れないと出てこない。また「は」と「が」の主語の使い分けに関して、大野晋の説を紹介している。(象は鼻が長い、など)これは「は」は旧情報、「が」は新情報として理解すれば良いと書いてあって、ためになった。また日本語の歴史に関して書いてあるが、あまり興味はない。日本語を分類するとウラル・アルタイ語族に属すると何度も出てくる。これは大昔から言われている話だが、最近ではこういう分類自体がなく、日本語がそれに属するとは言わないそうだ、と読んだことがある。正直言ってウラル・アルタイ語族(があるとして)に属するか、しないかなどの議論はどうでもいい気がする。それでもって日本語の使い方に影響などあるはずもないから。

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