2022年12月4日日曜日

松本清張『地方紙を買う女』 昭和32年

短篇である。甲府の地方紙をある女が購読の申し込みをした。連載されている歴史小説が面白いという理由で。数週間前から送って欲しいとの要望だった。

新聞社がこの申し込み理由を歴史小説の作家に知らせた。作家は発奮して連載に励んだ。ところが後になって小説が面白くなくなったから購読を止めるという連絡が来た。

これを読んで作家はおかしいと思った。いよいよ面白くなっているのである。理由が納得できない。この女は地方紙に載っている情報が欲しかったのである。それは最近、記事になった心中死体の発見だった。作家は女が心中と見せかけ殺しておいた死体が発見されるまで待っていたのだろうと推測する。

作家は女と近づきになり、他の女を含め3人で旅行に行く。旅先で女が寿司を弁当として出すと、作家はそれを叩き落す。毒が入っていると叫ぶ。女のした殺人を話す。しかし女はその弁当を何食わぬ顔で食べて一人帰った。後に作家宛の手紙が来た。作家の推理はその通りだった。毒は弁当でなくジュースに入っていたのだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿