2020年10月30日金曜日

ナボコフ『記憶よ、語れ』 Speak Memory 1960


 『ロリータ』で有名なロシア出身の作家、ウラジーミル・ナボコフの自伝である。ただ普通の自伝とはやや異なるように見える。単なる自分の経験の記述で終わらない。

荷風の『断腸亭日乗』は日記の形を借りた公表用作物のように、このナボコフの作品は自伝の姿を借りたエッセイである。過去の自分の眼に映った世界をどう見ていたのか、著者自身の意見表明が続く。プルーストの『失われた過去を求めて』を思い出してしまった。ただプルーストの方が小説であってだけ読みやすい。

ナボコフは1899年、ロシアのペテルブルクの貴族の家に生まれた。父親は当時の政治その他で活躍した大物らしい。また家系を遡り、大物、有名人がいたと説明がある。こうした偉人の自伝を読むと、いかに出自が優れているか、同時代の中でも優れた家柄の出身かが分かる場合があり、ナボコフもまさにその例である。

大津栄一郎訳、晶文社、1979

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