2020年10月11日日曜日

壁あつき部屋 昭和31年

 小林正樹監督、松竹、110分、白黒映画。

戦後、巣鴨の拘置所で収容されているB級、C級の戦犯たち。いずれも上官の命令に従ってやっただけなのに、などと収容された事実は納得できない。その中でも小沢栄太郎演じる上官が命令したのに、小沢は自分は知らないとうそぶき、その犠牲になった者がいる。ただ被害者からの観点だけではない。戦時中にやった海外での行為が映画中何度か回想される。現地の者たちへの残虐行為が映し出される。戦後の日本人は、銃後の国民に至るまで、占領軍からいかに日本軍が戦時中、残虐行為を働いたか散々聞かされていた。これは戦後の日本人の自己認識の基礎となった。たんに指導者たちに騙されていたと言ってすまされる問題でない。戦後十年も経っていない時期に製作され、公開は数年後になった。非常にイデオロギー闘争や戦争責任論が激しかった時代である。だからそれはこの映画にも反映されている。ただしイデオロギー論争だけではプロパガンダ(宣伝)映画になってしまう。

映画では個人の内面の問題に入り、特に自分の母親の死で一時的に釈放された者の行動は一つの焦点である。自分を陥れた元上官に復讐を考えていた。その顛末は・・・ということで脱走もせず拘置所に戻ってくる。個々人だけではどうにもならず、また政治のせいだけにしても正しくない問題を扱った映画である。

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