2023年7月21日金曜日

角田喜久雄『下水道』春陽文庫 1996年

表題作ほか12の短篇を含む推理小説集。表題作は総体的に長く、大正15年に公表された。若い女の語りによる一人称小説で、かなり奇天烈な構成になっている。

暴風雨の夜、雨の中、語り手の女は下水道に入る(よく分からない)。裸になる。下水道の壁に明かりが見えた。そこから時間は遡り、過去の犯罪の話になる。行方不明になっている若い男がいる。きょうだいに恋人がいるが、そのどちら共が相手が男を殺したのではないかと疑う。風呂屋で首吊りがある。

実は殺されたと思っていた男はその犯罪を、自分のきょうだいやその恋人に嫌疑がかかるように工夫したのである。なんでそんな工夫をしたか、分からない。このような真相を語り手は、下水道の壁の中に、死んだと思われていた男が瀕死の状態でいて、それの告白を聞いて理解する。女が聞いているとは男は知らない。どうしてこんな不可解な、非現実的な話を思いついたのか、それも不明である。

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