2023年7月29日土曜日

コリンズ『毒婦の娘』 Jezebel’s daughter 1880

イギリスの事務所で働く青年が語り手、事務所を仕切っていた伯父は亡くなり、今は伯母にあたる夫人が責任者である。仕事への女の登用を積極的に考えている。更に精神病院に行き、反対を押し切って、そこの危険患者とされる男を連れてくる。誠意を持って接すれば問題ないと確信している。この男はジャックという名である。

事務所はフランクフルトに支社がある。そこの支配人の息子であるドイツ人の青年フリッツがロンドンにやって来る。語り手と意気投合する。フリッツには恋人がいる。しかしその恋愛は妨げられている。恋人の母親に良からぬ噂がたっている。夫である化学者の死に関わっているのではないか、多大な借金があるとかである。そんな相手と父親が結婚を許すはずもない。

語り手は伯母の命令でフランクフルトに行く。着いてすぐ会った魅力的な若い女ミナがフリッツの恋人であった。その母親フォンテーヌ夫人にも会う。貧しい暮らしをしていた。ドイツの支社ではフリッツの父ケラーと共同で仕事をしている陽気な老人に会う。語り手は別の人物からフォンテーヌ夫人について宜しからぬ評判を直に聞く。それ以来フォンテーヌ夫人を素直に見られなくなった。ケラーが重病になる。それを治したのは、フォンテーヌ夫人が持っていた薬であった。以来ケラーはすっかりフォンテーヌ夫人を信頼するようになる。ケラーの友人である共同経営者はフォンテーヌ夫人に求婚する。断られる。すっかり気落ちして仕事から離れる。

語り手の伯母がフランクフルトにやって来る。あのジャックを連れてである。ジャックはすっかり伯母の忠実な家来になっており、伯母も信用していた。ジャックはかつてドイツでフォンテーヌ夫人と夫に使われていた。フリッツとミナの結婚を阻むものはない。しかしケラーの高齢の姉が結婚式に出席するため、式を延期しようとなる。後でこれを聞いたフォンテーヌ夫人は驚愕しなんとしても延期させまいとする。その理由は結婚によって相手と親戚になり、まだある巨額の借金を肩代わりさせようと目論んでいたからである。式が延期されると借金支払いの期日に間に合わない。語り手の伯母はフォンテーヌ夫人の盗みなどを見抜いていた。

その伯母がいきなり重病にかかる。ジャックはかつてフォンテーヌ夫人の夫が作った薬が病気にきくと理解し、フォンテーヌ夫人の部屋から薬の壜を盗み出し、伯母に飲ませる。後に伯母は死んだ。医師は以前のケラーの病気と回復と、今回の伯母の病気を見て、何者かが毒殺を図ったせいでないかと疑う。伯母の死体は安置所に寝かされたが、ジャックはそばに付き添い、またフォンテーヌ夫人の別の薬を飲ませる。伯母は蘇生した。フォンテーヌ夫人は死ぬ。(北條文緒訳、臨川書店、傑作選第12巻、1999年)

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