孤児だったジルーシャ・アボット(後にジュディと改称)は大学に入学させてもらう。それは匿名を条件にした評議員の行為による。その不明の恩人宛、ジュディが書いた手紙群から成る小説。作者自身の描いた挿絵、スケッチも楽しい。
語り手ジュディが小説家志望ということもあって、読んだ小説などの作品が今となって面白い。挙げられている小説は当時のベストセラーで、今でも読まれている作品は当然多い。例えば『若草物語』を読まないで育った女の子は自分くらいだろうとか、その他『ディヴィッド・コパーフィールド』『アイヴァンホー』『ロビンソン・クルーソー』『ジェイン・エア』など。それにピープスの日記が挙がっており、少し驚いた。これは岩波新書の紹介によって我国でも有名になった日記だと思っていたら、ここにもちゃんと名前があった。さらにp.92に「マリー・パーキェフの日記」とあり、注で有名なロシヤ出身の画家となっているが、こんな人は知らない。調べてみると、名前はマリー・バシュキルツェフの日記が正しく、なぜ訳者がこんな表記にしたか不明である。マリー・バシュキルツェフはウクライナ生まれの画家で、多くの作品を残した。それに絵と同じくらい有名なのがその日記である。日本でも戦前に訳が出て戦後間もない時期に復刊された模様。戦前にはバシュキルツェフをモデルにした映画もあったらしい。なんと25歳くらいで病死したらしい。この日記を作中でジュディが話しており、今回の読者で初めてこの女流画家兼文筆家を知った次第。
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