難解で知られる大江の長編小説。四国の田舎に帰る蜜三郎とその妻。二人の間には障害児が生まれ夫婦仲は冷えている。蜜三郎の弟、鷹四は米国から帰り、故郷で若者を指導し、フットボールをしようとしている。
二人の兄弟の曾祖父の弟は、百年前の万延元年に一揆を起こし、その後高知に逃げたのではないかと言われている。故郷である谷間に戦後スーパーマーケットが出来た。その長は朝鮮人でスーパーマーケットの天皇と言われている。このスーパーマーケットから住民が好きな品物を勝手に持ち出す、強奪するという事件が起こった。指導者は鷹四である。蜜三郎は呆れて見ていて、その妻は鷹四に肩入れしており、寝たという事実まで分かった。
最後の方で鷹四は兄の蜜三郎に、過去の罪悪を話す。自分たちの妹と寝たというのである。その後妹は死んだ。東京から一時的に故郷に帰っているだけの蜜三郎は、全く鷹四のやること、人格そのものに共感できない。鷹四はなぜそんなに自分を嫌うのかと蜜三郎に叫び、その後自殺する。
蜜三郎らの家は既に鷹四によってスーパーマーケットの天皇に売られていた。その天皇が来る。手下に家を壊し始めさせる。すると家の地下に曾祖父の弟が隠れていた秘密の空間が見つかる。高知へ逃亡していたわけではなかったのだ。妻は鷹四も死んでしまった今、鷹四の子を腹に宿しているが、蜜三郎に結婚生活をもう一度やりなおさないかと呼びかける。
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