政治学者、思想史家の丸山眞男が弟子である松沢弘陽、植手通有を聞き手として、自らの人生を語る。まず敗戦前後の状況から始まる。そこから過去に戻り、府立一中、一高時代の話になる。旧制中学は5年制だったが、4年修了の時点で旧制高校を受験できる仕組みだった。丸山は受けて失敗したらしい。これは惨めな経験だったようである。高校時代、それ以前から親しんだ映画の思い出などが語られる。他書でも書いてある、警察に検挙された経験は大きな意味を持ったようだ。また大学では文学部に行って独文学をやりたかったらしい。しかし大学では大学でしか勉強しないものをやれと言われ法学部に行った。法律は叶わないから政治に行ったそうだ。
大学に行ってからの、当時の教授連の話が多い。丸山が日本政治思想史を専攻するようになったいきさつは他書でも書いてあり、また当初、早稲田の津田左右吉を呼んできた事情も周知であろう。丸山が大学を出て助手になり、助教授になった時代は日本が戦争に突入していく時代でもある。そのあたりの政治情勢は丸山の解説でよくわかる。更にマルクス主義が全盛時代であり、マルクス主義は歴史主義で歴史の変遷を前提にしているから、自然法、自然権のような超歴史的な発想は対立的であるとも分かった。軍隊に召集され広島に行った話も周知である。戦中の自由主義の実際について記述があり参考になる。
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