2025年3月8日土曜日

鉄路の闘い La bataille de rail 1946

ルネ・クレマン監督、仏、82分、白黒映画。第二次世界大戦中、占領下のフランスにあって鉄道員などによる対独抵抗運動を描いた映画。

占領下、ドイツ軍は鉄道を使って戦闘用の兵器などを輸送していた。その鉄道輸送にフランス側の妨害工作がある。汽車の運行妨害をしたり、レールをはずすなどの行為で独の輸送を邪魔する。途中では独軍の戦車、軍人を乗せた汽車をレールを外して止め、銃撃戦を挑む。独側も機銃や戦車などを使って応戦する。多くの仏抵抗勢力が殺される。映像的に圧巻はノルマンディへ戦車を多く搭載してゆく列車を脱線させるところか。貨車の横転、多くの戦車が転落していく。最後はドイツが逃げ出し、フランスの国旗をかざした列車が運行され人々が喜んで迎える。いかにも戦争直後の勝利感に溢れている時代の作品に見える。

2025年3月7日金曜日

ハウスシャーク House shark 2017

ロン・ボンク監督、米、111分。家の中に巨大な鮫が現れ、人間を襲う(食う)という映画。

家を売るため客を案内していると鮫が現れ、客を襲う。トイレに座っている若い女が便器に吸い込まれ(下に鮫がいるという設定)、血まみれの便器になる。鮫は巨大な頭しか出てこない。それが家のあちこち扉の向こう、人間の後ろから現れる。この鮫退治に男が三人立ち向かう。若い男はルーズベルトと言い、鮫退治に来た一人はエイブラハム・リンカーンという男である。あと一人が鮫退治専門というザカリーなる男。この三人が鮫退治に挑むのだが、無駄な場面の連続。最後にリンカーンが飲み込まれアル中なので銃で撃て、そうすればアルコールに引火し爆発する、といってその方法でバラバラにする。

悪魔の調教師 Nightmare circus 1974

アラン・ルドルフ監督、米、83分。ラス・ベガスに行く若い三人の女が途中で車がエンコし、男に声を掛けられ、そこの家に電話を借りに乗せてもらう。ところが荒野の一軒家の納屋に閉じ込められる。しかも既に監禁されている他の女らがいた。サーカスに出すために調教しようと言うのである。男の父親が放射能を浴びて廃人狂人化しており、最後にはこの父親に男もやられる。知り合いが警官と共に助けに来て助かった者もいるが、殺された者もいる。

2025年3月6日木曜日

ストーリー・オブ・ラブ The story of us 1999

ロブ・ライナー監督、米、95分。ブルース・ウィリス、ミシェル・ファイファー出演。二人は結婚して15年になる。少年と幼い娘の子供がいる。

夫婦仲は悪化しており、なにかと言い合いになる。子供たちの前では仲の良い夫婦を演じているが、ウィリスは別居を決心する。ファイファーは料理教室で出会った離婚している男に好感情を持つ。ウィリスは自分のこれまでの言いたい放題の問題を友人と話し合い、妻との仲を戻そうとする。ウィリスが家に行ってファイファーに話そうとしたら、奥から料理を作っている男の声が聞こえてきていっぺんに気が変わる。

子供たちがキャンプに行っている。終わって車で迎えに行く。どう子供たちに自分らの離婚を切り出そうか、迷う。キャンプ場に着く。子供たちに再会できて二人とも子供たちも喜ぶ。ファイファーはウィリスに言う。素晴らしい子供たちを作って来た自分たちの間を元に戻したい。ウィリスもファイファーを抱きしめる。

五月の七日間 Seven days in May 1964

ジョン・フランケンハイマー監督、米、118分、白黒映画。バート・ランカスター、カーク・ダグラス、フレデリック・マーチ他出演。軍人が米国をクーデターで乗っ取ろうとする話。

映画制作より数年先、近未来の設定。支持率の低い大統領はソ連と軍縮条約を結んだ。これに対し、空軍の最高司令官であるバート・ランカスターは大反対をする。条約などで平和は保てない。条約など守ったことのない相手である。真珠湾攻撃も条約があったところで防げたはずもない。ランカスターの部下がカーク・ダグラスである。そのダグラスは偶然、秘密の作戦やそのための措置があると知る。なぜ自分が知らされていないのか。調べていくうちに上司ランカスターが仕組んでいるクーデター計画のようだ。大統領に話す。大統領は部下たちにその証拠を集めるよう指示する。本当だった。

大統領はランカスターを部屋に呼ぶ。大討論になる。ランカスターは大統領のやり方では米国を守れない、自分が指令者になるつもりだと主張する。部屋を出てランカスターは計画を進めるが、大統領の方もランカスターを排除すべく手はずを勧める。最後の記者会見で大統領は、いつか国家間のもめごとを平和に処理できる日が来るだろうと希望を述べる。

2025年3月5日水曜日

クロフツ『樽』 The cask 1920

イギリスの推理作家クロフツの処女作。現実的な推理小説として名高い。犯人当てでなく、アリバイ崩しを主眼にした推理小説である。

イギリスにある樽が届く。重いので船から吊り下げて下ろす際に縄が切れてしまい落下した。そのため少しだけ中が分かるようになった。人間の手のような物が見えた。それで警察に行く。連絡を受けて警察がやって来ると誰かが持ち去ったらしい。それは樽の受取人であったから渡したと。警察はこの樽の行方を追う。受け取ったのは郊外に住んでいるある画家のようだ。その男に確かめる。フランスで買った宝くじが当たって、相棒がその賞金の金貨を送って来たと言う。開けてみると確かに若干の金貨が出て来たが、女の死体も入っていた。男は驚愕し、女の名を叫んで気を失う。その後も精神が正常でなくなり入院のはめになる。

フランスから送られてきた樽だから警察はフランスに調べに行く。以前の事件で知り合った友人の警部と共に、樽が来た経緯を探る。まず女の死体が誰か分かる。その主人に会いに行く。妻は行方不明になっている。イギリスに妻かどうか確かめに行って確認する。犯人は誰か。端折って書くと、女の主人かイギリスで受け取った男か、どちらかではないかとなる。主人のアリバイを調べる。問題はなさそうだ。イギリスの男の方が怪しい。イギリスの男は女の情人であったようだ。イギリスで受取人を逮捕する。逮捕された男の友人らがその無実を証明するため弁護士を雇う。女の主人しかいないが、アリバイは鉄壁である。そのアリバイ崩しに行なっていく。(大久保康雄訳、創元推理文庫、1965)

2025年3月4日火曜日

火山湖の大怪獣 Crater lake monster 1977

ストロンバーグ監督、米、83分。田舎にある湖に流星が落ちる。それによって怪獣が孵化したという設定。洞窟の奥で太古に書かれた恐竜の絵を発見する。湖では不思議な出来事が発生する。貸ボート屋をしている男らがいて、そこでボートを借りたアベックは湖から現れた恐竜を見て逃げ出す。ボート屋の男らはアベックを見つけるが事情は分からない。

保安官は不思議な出来事を調べているうちに、殺人強盗犯を見つけ追いかける。犯人は湖のほとりまで逃げるが恐竜に食われる。保安官は巨大な足跡を見て教授に相談に行く。後に保安官も恐竜に遭遇する。対策案を村人を集め協議する。貴重な観光資源ではないかという意見や危険だから退治すべきと、まとまらない。そこに襲われた村人が来るので、恐竜のところに行く。観光にしようと言っているボート屋の一人は恐竜にかまれ投げられ死ぬ。保安官はブルドーザーで恐竜に立ち向かい身体を傷つけ倒す。

2025年3月3日月曜日

平野啓一郎『本の読み方』PHP文庫 2019

小説家の平野啓一郎が2006年に出した書の文庫化。副題に「スロー・リーディングの実践」とあるように速読ではなく、ゆっくり読めと説く。熟読、精読と言い換えてもいいと言う。つまり量でなく質の読書にすべき。現在多くの本を読めるようになったが、昔に比べ知的になっているのだろうか。魅力的な誤読はするべきである。

第2部では具体的な本を取り上げ、その読み方を説明する。取り上げている本は『こころ』『高瀬舟』『橋(カフカ)』『金閣寺』『伊豆の踊子』『蛇にピアス』『葬送』『性の歴史 Ⅰ 知への意志(フーコー)』である。これらの書でその読み方を例示する。

また書き手として小説の執筆についても書いてある。一日4、5枚書ければよく書いたと思えると。他の作家も同様らしい。それに休憩をとる。30分程度書いたら、3~5分は休むそうだ。これの繰り返しで10時間以上机に向かっていられると。執筆はマラソンでなく、短距離ダッシュの繰り返しとある。

2025年3月2日日曜日

島田荘司『占星術殺人事件』改訂完全版 2013

1981年にデビュー作として発表された推理小説の改訂完全版とある。内容は戦前、2・26事件当時に起きた殺人事件を、小説の発表された頃、つまり1980年頃に名探偵が解くという話である。

最初に殺された画家の手記なるものがある。その画家がアトリエで密室殺人される。後に娘など身内の大量殺人、しかも猟奇殺人が起こる。その後、40年間警察などが捜査してきたが、謎のままだった。評価が高いので期待して読んだが、全く小説として面白くない。冗長で読んでいるうち飽き、最後の方は真相などどうでもいいから早く終わってくれと思った。

最初にある手記は昭和11年(1936)に書かれたとあるが納得のいかない記述がある。どう考えても間違いじゃないかと思ったところを以下に書く。p.24に「妙は 現在都下保谷に私が買い与えた家で」とある。東京都が出来たのは昭和18年で、それ以前は東京府。昭和11年に「都下」などという言葉はない。

更に日本帝国の北南東西、それぞれの端が書いてある。p.44に「 幌延もオンネコタンも日本領土と考える者は多いが、(中略)ハルムコタン以南を日本領域と考えるべきである。」とある。領土はどこからどこまで厳密に決まっており、個人の考えで決まるものではない。(戦後日本の領土問題は例外である)手元に昭和9年の「帝国地図」の復刻版があるが、東端は「北海道占守郡占守島東端」とある。占守島はしゅむしゅとうと読む。北端は「北海道占守郡阿頼度島北端」とある。阿頼度島はあらいどとうと読む。占守島、阿頼度島ともにカムチャッカ半島に近い千島列島の島である。いずれも当然、春牟古丹(ハルムコタン)島より北である。他に幾つも同様に北にある島がある。更に西端が与那国島とあるのは噴飯物である。当時の西端は台湾の西にある澎湖諸島である。先の帝国地図の西端を見ると「台湾高雄州澎湖郡花嶼西端」とある。明治当初の日本の領土を基本に考えた、と書いてあるならまだしも、日本帝国と書いてあるのである。まるで戦前の日本の領土を全く知らない、戦後の出来の悪い人間が書いたようなものである。もちろんこれは中心線を東経138度48分とするための推理小説ならではのご都合主義の極みである。