作家坂口安吾の掌編と評論、座談が収められている。内容は次の通り。
復員(掌篇小説)/恋愛論/欲望について―プレヴォとラクロ/二合五勺に関する愛国的考察/詐欺の性格/ヤミ論語/敬語論/呉清源論/座談会 現代小説を語る(坂口安吾・太宰治・織田作之助・平野謙)/座談会 歓楽極まりて哀情多し(太宰治・坂口安吾・織田作之助)/大阪の反逆―織田作之助の死/不良少年とキリスト(追悼 太宰治)
最初の『復員』は文庫で2ページ、見開きで読める。戦争から幅員してきた。片手、片足を失っていた。家族は最初の一日だけ珍しがっていたが、明くる日からは厄介者扱いである。婚約していた娘は結婚していて子供もできていた。行って女の間の悪そうな顔で、初めて頬の暖かいものを受け止めてきた感じがして満足して帰った、とある。戦争後の復員兵が家に戻ってもかえって不幸な目にあったとは昔のドラマにもよく使われた。大部分は評論で、『ヤミ論語』で幸田露伴をやっつけているのは痛快だし、座談会では戦後間もない時期の無頼派の面々の発言が面白い。
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