2025年2月28日金曜日

小峰隆夫『私が見てきた日本経済』日本経済新聞社 2023

本書は官庁エコノミストとして名高い著者が、公務員生活の中で携わった経済分析や政策決定について回顧的に述べており、役所の仕事の実際が分かるようになっている。もちろんエコノミストなのでどのように経済を見たか、それを役所の文書として出す際、どういう工夫をしたかの記述もあって部外者に情報を与えている。

実際エコノミストとして経済の現状分析や見通しを発表している人はそれなりにいるが、公務員だと時の政府の政策にたてつくことはできず、なるべくそれを支持する方向で取りまとめなくてはならない。全く中立的な立場であれば、別の書き方をした、あるいは結構異なる意見を出していただろうものでも、組織人としての制約がある。金融機関のエコノミストは多いが、金融機関ならではの制約があるかもしれないが、誰もそれを書かないので分からない。ともかく経済分析の知識に加え、役所の中ではどのように作業が進められていくのか、その実際が書いてあるので有用な書である。

0 件のコメント:

コメントを投稿