菊池幽芳が『秘中の秘』に先立って大阪毎日新聞に連載していた探偵小説である。退職する辣腕刑事を祝う場で、各人が過去に経験した失敗談、成功談などを話す、短編の連作。
初めにある、犯人に逃げられた話は解説にあるように乱歩の長編を思い出す。郵便切手を使った殺人方法、富豪が誘拐されて脅迫状が来るがその真相、客船で貴重品が盗まれる事件が続発する。その手口は思いつく人が多かろう。他にも殺人を予告する話を盗み聞き、被害予定者に知らせるがその真相、金粉を盗み出す担当者の手口などあり、これらは推理小説そのものであり、各話は短く読みやすい。(菊池幽芳探偵小説選、論創社、2013年)
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