2023年5月21日日曜日

柳美里『JR上野駅公園口』河出文庫 2014(単行本刊行年)

語り手は中年男、今の上皇が天皇をしていた時代で、明仁上皇と同じ年の生まれである。福島県の出身。上野公園内のホームレスの実態が書いてある。語り手自体からしてホームレスの一員である。過去の語りが多い。上野公園にまつわる故事が多く書いてある。語り手は自分を不幸な男という。確かに息子を二十歳にになったばかりで亡くす。妻は65歳で自分が寝ている間に死んでいた。また孫娘が震災にあって死ぬ話も出てくる。自らの不幸を語り歩く人といった感じである。

しかも語り手が明仁上皇と同じ年の生まれ、息子は今上(徳仁)と同じ年の生まれで、名前も一字もらっている。その息子は早死にする。また語り手の妻は節子という(美智子でない)。この名前は昭和天皇の母と同じ字である。(読み方は異なる)外見的には天皇一家の成員と似ているような、不幸な一家の物語である。権力=天皇、不幸な庶民=語り手一家として、権力批判をしているなら漫画である。

天皇は憲法を初め制度に縛られ、全くの無能力者である。国事行為は凡て内閣の助言と承認を必要とし、政治に関する権利は一切ない。基本的人権などもない。国家の象徴であるから日の丸と同じである。日の丸に人権がないように天皇にも人権がない。外国で賞をもらったというのも権力批判が書いてあるので外国で評価されたのだろうか。映画でも外国の映画祭でグランプリをとった『万引き家族』も日本の悪い面(といってもほとんど例外的な状況なのだが)を描いているので評価されたのだろう。

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