エコノミストとして有名だった金森久雄の自伝を兼ねた戦後経済史。金森は戦後商工省に入省するが、まもなく経済企画庁に移り、退官後は日経センターで役職を勤めた。今から半世紀前は経済に関心がある者は誰でも知っているエコノミストであり、沢山の著書を出していた。
この著に書いてあるようにケインズ派であり、強気の見通しでとおっていた。金森の活躍したのは高度成長期とそれから安定成長に移ってからも、日本経済が世界の中で優等生の時代だった。だから金森の主張は多くの場合もっともらしかったし、エコノミストの大御所のような存在でいられた。また金融も長い間、公定歩合で調整し、資金需要の強い時代だったから景気過熱の引き締め役くらいの理解で良かった。金森の活躍した時代以降は、世界との相互関係が強まり、金融が実体経済とより緊密な関係になっていく。この著が出版されたのはバブル崩壊後、経済が軟調を続ける中、円の対ドルレートが80円を切った時期である。
バブル崩壊後、失われた十年、二十年、三十年と言われるような日本経済の長期的低迷期(以前と比べ)が続き、日本経済は世界の劣等生となってしまった。金森ならなんと言うであろうか。それはともかく本書は金森が見てきた戦後の日本経済史が分かりやすく書かれている。自己正当化の文章が多いが自伝とはそんなものであろう。
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