2023年5月16日火曜日

宮崎勇『証言戦後日本経済』岩波書店   2005

著者は官庁エコノミストとして名高かった官僚である。戦後間もない時期に出来た経済安定本部に入り、その後身の経済審議庁、経済企画庁に長く勤め、退官後大和総研に移った。

本書は官僚エコノミストであった著者の経済政策形成に関わる回想である。自伝、回想録といっても著者が執筆した書でなく、インタビューを受けて答える、そういった形の本である。聞き手は経済学者で日本経済史の専門家である中村隆英元東大教授である。戦後の経済史にあるような客観的に綴られる歴史でなく、その時に政策形成に関わった者ならではの内部事情など書いてあり興味深い。自伝の類であるから本書の初めに著者が言っているように、自己正当化するところはどうしても出てこよう。ただしそれを承知の上で読めば益するところが多い。

このインタビューが行われた当時はまだ中国が途上国であり、日本が面倒みてやるべきといった発言が目立つが、今では中国はアメリカと並ぶ大国であり、日本など全く霞んでいる。

0 件のコメント:

コメントを投稿