著者は宗教学者で、キリスト教の適当な入門書がないため執筆を思い立ったと言う。宗教学者という立場から、つまりキリスト者でない立場からの書である。キリスト教のあらましを書いた本はいつくかあるが、キリスト者が書いている物がほとんどではないか。本書は学者として書いているので、キリスト者が読むと不快に思うところがあって不思議でない。
本書で面白かったところは、新約聖書は時代順に並べてあるが、執筆順は異なるというところである。福音書中マルコ福音書が一番古いとは誰も知っているが、パウロの書簡はもっと古いそうである。ローマの信徒への手紙、コリントの信徒への手紙などは有名であろう。この福音書より古い文献にはキリストの死と復活は述べられているが、福音書に多くある奇蹟は書いていない。だから奇蹟は後の創作ではないかとあって興味を持った。更にキリスト教は一神教と言われているが、三位一体の他、マリア信仰や聖人も信仰の対象とされ本当に一神教と言っていいのかとある。前から気になっていた預言者と予言者の区別についても記述がある。名画『禁じられた遊び』についても新しい見方が示してあって面白かった。
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