2020年11月26日木曜日

バルザック『知られざる傑作』 Le Chef-d’œuvre inconnu 1831

 

バルザックの芸術小説の中でも名高い一作。若い画家プーサンがまだ無名の時代、有名な画家を訪ね、その際、師匠に当たる者を知る。極めて優れた才能を持つ巨匠だった。長年自分の絵にふさわしい美人が見つからない。それで絵画を完成できない、と分かる。プーサンのモデルで恋人は非常な美人であった。プーサンは自分の恋人に上記巨匠のモデルになってくれと頼む。恋人は嫌がったがプーサンの頼みなのでしょうがない。プーサンともう一人の画家は、巨匠のアトリエに行く。長年かけて制作してきた絵画はどんなものか。見ると足の絵しかない。他の部分はない。巨匠が描いたつもりでいたのか。巨匠に伝えると驚く。明くる日その巨匠は死んだと分かる。

昔読んだツヴァイクの『見えないコレクション』を思い出した。もちろんバルザックの方がはるかに早い時期の創作である。

バルザック芸術/狂気小説集1には、これまでにブログで書いた小説の他、『財布』『ピエール・グラスー』が入っている。前者は、無くなった財布を取られたかと思っていた画家がその家の若い娘が刺繡してくれていたと後に分かる。後者は、富を築いたむしろ凡庸な画家を描いている。

芳川泰久訳、水声社、2010

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