2020年11月14日土曜日

三島由紀夫『源泉の感情』 昭和45年

 


三島由紀夫の対談集。死の直前の出版であるが、それまでなされた対談を集めたもの。目次は次の通り。

美のかたち―『金閣寺』をめぐって(小林秀雄)/大谷崎の芸術(舟橋聖一)/二十世紀の文学(安部公房)/エロチシズムと国家権力(野坂昭如)/文武両道と死の哲学(福田恆存)/演劇と文学(芥川比呂志)/七年後の対話(石原慎太郎)/文学は空虚か(武田泰淳)

日本の芸術・・・(歌舞伎(坂東三津五郎(十五代))/新派(喜多村緑郎)/能楽(喜多六平太)/長唄(杵屋栄蔵(三代)/浄瑠璃(豊竹山城少掾)/舞踊(武原はん)

あとがきによれば最初の刊行時の内容からこの文庫本では、数編割愛してあるとのこと。その理由を明記してもらいたかった。小林から武田までは当時の知識人、論客であり、日本の芸術ではその道の名人との対談である。三島は知識人で、語る内容は高度であり、ちきんと理解できたかと思う発言は結構ある。

三島の死から50年経っており、さらにそれより20年くらい前の対談も含まれる。時代を感じさせるものがあるが、内容が陳腐化していると思わない。保守派の代表的論客だった福田恆存との対談では当然ながらイデオロギーの基本的相違はない。対談がなされ、発表された当時と今の読者はかなり違った感じを持つだろう。この対談だけは確かに言える。

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