著者のフォーキン(1965~)はロシヤのロシア国立文学博物館研究員。本年2月日本で行なった講演の記録。
ドストエフスキーのカラマーゾフをロシヤ正教の立場から分析した論文。著者によればカラマーゾフは伝統的な小説ではない。小説の形をとった作者の信仰告白という。
本論文では『カラマーゾフの兄弟』の精神的内面構成はキリスト中心的な性格を持つとする。アリョーシャをキリストと見立て、作品を理解する。イワンの語る「大審問官」も最後にアリョーシャがイワンに接吻することによって、キリストの勝利を意味すると解釈する。ドストエフスキーのキリスト教解釈の問題はいつも日本人を悩ませるが、その回答の一つの例がここにある。
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