2020年11月30日月曜日

ドストエフスキー『悪霊』 Бесы 1871~1872

 ドストエフスキーの長篇小説でも特に評価が高い、というより関心を持たれている作品である。当時のロシヤで革命集団が仲間を殺害した事件があった。それに触発されドストエフスキーは革命運動への批判という意図をもって書き始めたが、もちろん小説としてそれに留まらない。特に主人公にスタヴローギンという謎めいた青年を配し読者を惹きつける。スタヴローギンを巡る連中の革命運動や、スタヴローギンの過去が大きな関心を読者に呼び起こす。後者には少女に対する不道徳行為があって、ここの部分が当時は雑誌に発表できなかった。活字にしてまともな雑誌に載せられるような内容でないと判断されたからである。そのため作者は以降の筋を新たに工夫する必要が生じ、今日我々が読める作品は妥協の産物となった。それにしても強い印象を残す作品となっている。(翻訳多数)

0 件のコメント:

コメントを投稿