バルザックの短篇集で評論も入っている。所収は『グランド・ブルテーシュ奇譚』『ことづて』『ファチーノ・カーネ』『マダム・フィルミアーニ』及び評論の『書籍業の現状について』である。
『グランド・ブルテーシュ奇譚』では、語り手が興味を持った、朽ちた古い館のいわれを尋ねていく。何人かの話を聞き、女主人の艶聞にまつわる、ポーの『アモンティリャードの酒樽』を思い出すような真相が分かる。最後のところだけをコントにすれば2、3ページで終わらせてしまえるかもしれない。『ことづけ』は旅で知り合った若い男が事故死する。死に際の頼みで、男の恋人であった貴婦人の屋敷に行く。『ファチーノ・カーネ』は同名のイタリア人の盲目の老音楽師から聞いた話。音楽師が若い時代にヴェネツィアで捕えられた際、宝の山の場所を知った。それを取りに行こうと語り手に持ちかける。『マダム・フィルミアーニ』は同夫人の評判を色々な者が語るところから始まる。後半は、若い男と夫人の恋愛物語になる。『書籍業の現状について』はバルザックが当時の出版界の改善案を論じる。
宮下志朗訳、光文社古典新訳文庫、2009
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