町の郊外にある家を舞台にした三幕の劇。その家の長男が戦争から戻ってこない。みんなは死んだだろうと思っている。しかし母親はそう思っておらず、いつかは帰ってくると期待している。息子は友人の家の娘と結婚する予定だった。戻ってこない息子の弟は、その娘と相思の仲になっている。しかし母親は、弟との結婚を許さない気でいる。それを認めたら息子の戦死を認めるわけだから。
もう一つ問題があったとわかる。娘の父親は刑務所に入っている。それは戦時中不良品を戦闘機製作に納入し、そのため多くの者が死に、罪を問われているのである。娘の兄がやって来る。この家に抗議に来たのだ。この家の主人と兄妹の父は、共同で戦時中製作していた。不良品納入の罪は、むしろこの家の主人にあると分かった。家の主人は知っていながらみんなやっていた、状況が許さなかったと言う。まだ戻らない息子の手紙を娘は持っていた。それによると不良品製作の罪が自分の父にあると知ったので、息子は責任をとって死ぬ気でいた。
倉橋健訳、ハヤカワ演劇文庫、2017
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