2020年9月18日金曜日

筒井康隆『創作の極意と掟』講談社文庫 2017

 


小説家筒井康隆が、小説家、あるいはその志望者に対して書いた、心がけというか小説創作の裏話、更にいかにこれまで筒井は工夫して小説を書いてきたか、が述べられている。

小説を書く側を相手にしており、より面白く読める、あるいは理解が深まる読書の仕方が書いてあるわけではない。例えば「羅列」という章で、対照的な者を並列して、いくつもの例を次々と挙げて、十行以上続く文章を「こういうものを「出鱈目に書いている」と思って評価しない人は、一度自分で書いてみればいいのである。いくら時間をかけても想像力が追いつかず。なかなかこれだけ書けるものではない」(p.104)と言っている。読み手にとっての評価は面白いかどうかである。出鱈目に書いているとか、批評家に言われたことがあったのか。自分で書いてみればいい、とはまさに別の書き手に対して言う反論である。読み手にいう言葉ではない。このように本書は書き手に対する書である。

読み手にとっても面白いところは当然ある。ただ小説創作の苦労を聞いて、小説の理解が深まるであろうか。これは読む者によって異なるだろう。しかし関心のある話題(ここでは小説の創作)をより深く知りたいと思うのは当然である。だから読書好きにも一読を勧めたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿