輪廻転生を扱った小説。ともかく非現実的な事柄が対象であるため、このような作品は幻想的になりやすい。それによって味わい深い効果を持つ場合がある。しかしながら本作品はそうでない。
輪廻転生という一般的な概念を知っていても目の前の人物がそれを力説すれば、あまり素直に信じられないのが普通だろう。そういう人達が登場して現実に引き戻される小説である。
そもそも小説の中心になる輪廻転生とは、不倫で大学生を好きになったものの、列車事故で死んだ女が相手を求めて、後の世の少女に生まれ変わるというより憑りつく、を指す。
永遠の愛を求めて、とか言えばロマンチックに聞こえるかもしれないが、憑りつかれた少女たちの親からしてみればホラーである。アメリカ映画で宇宙人が人間を乗っ取る話があったが、あれらと同じである。
本作をホラー小説と呼ぶべき最も大きな要因は、初めの女や後に登場する少女の死に方が残酷過ぎる。なぜこのような殺し方をさせたのか、寒気がしてくる。(こういう死に方をした後、人間の身体がどうなるか見たことがあるのか)
更に言葉つかいも気になる。本作は現代を舞台にした現代人の小説なのに、登場人物の女たちはみんな自分を「あたし」と呼ぶ。今時自分をあたしなんて呼ぶ女がいるか。19世紀の西洋小説の翻訳じゃあるまいし。
また登場人物のうちモンスターのような男がいて、小説の後半で、社長の妻と話す際、自分のことを「おれ」と呼ぶのである。気の置けない仲間うちなら「おれ」と言っていても、普通は「わたし」にするだろう。このほか会話にふさわしくない単語を使っている例がある。
また登場人物のうちモンスターのような男がいて、小説の後半で、社長の妻と話す際、自分のことを「おれ」と呼ぶのである。気の置けない仲間うちなら「おれ」と言っていても、普通は「わたし」にするだろう。このほか会話にふさわしくない単語を使っている例がある。
本作で評価すべきは、読みやすい点である。他人に読んでもらう文なら読みやすさは最重要事項であろうから。読みやすいから直木賞をとれたのかと思った。(他の直木賞作品は知らない)
本書は一見岩波文庫に見えるが、実は岩波文庫「風」と言って実は岩波文庫ではない。ついている栞によるとおふざけらしい。日本という国は個人が冗談を言うと親父ギャグだと馬鹿にされ、真面目を強要されるが、出版社やマス・メディアのような大きな組織のおふざけはユーモアと解さなければいけないようである。
岩波文庫ならもっと出して欲しい本はいくらでもあるのに、と読者は思うかもしれないが、今の岩波書店にそんな期待はできないのだろう。
岩波文庫ならもっと出して欲しい本はいくらでもあるのに、と読者は思うかもしれないが、今の岩波書店にそんな期待はできないのだろう。
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