本書は以前取り上げたが(2017/5/25)、再読して認識を新たにしたので改めて書く。
新書の中には題名だけを見ると概説書か入門書と思うものの、内容は著者の専門事項が書いてあり同業の学者を意識しているため、門外漢には良く分からない、という例がある。
本書はその点、入門、にとどまらず入門の入門と銘打ってある。
さぞかし基礎的事項を丁寧に説明してあるのか、例えば機会費用とか比較生産費原理とか経済学を勉強しないと分からない考えを、普通の教科書以上に詳しく解説しているのか、と読む前は思い込んでいた。
しかし読んでそのような本でないと分かった。事前の勝手な思い込みと違うからといって文句を言っているのではない。
本書を入門の入門という所以は何か。著者自身による「まえがき」やAmazonの「著者からのメッセージ」を読むと、ともかくわかりやすい入門書をめざした、とあり入門の二乗についてはあまり気にしていないらしい。
以下、著者の思いと違うだろうが自分の理解を書く。本書はミクロ経済学の方法と対象について全体像を提供しようとする。ミクロ経済学全般について俯瞰を与え、どういう学問であるかを読者に知らせる。きちんと経済学の勉強を始める(入門書を読む)前にその準備段階として、読む本である。だから入門の入門である。読書案内で普通の入門書や中級書を示し、次段階への勉強を促している。
紙数が限られているため、必ずしも十分な説明はできない。例えばp.91でナッシュ均衡が、P.129では支配戦略が出てくる。ナッシュ均衡は変えるとソンなので誰も単独では行動を変えない状況と説明がある。支配戦略は、相手の行動いかんにかかわらず自分に一番トクな選択肢、とある。ここではナッシュ均衡という言葉は出てこない。
違いが分からないと言われそうだが、それは読書案内にある本などでゲーム理論を勉強せよということなのであろう。(蛇足すれば前者は誰もがという状況であり、後者は自分の戦略を指す)
本書で一番笑ってしまったのは、p.124で太陽の恵みを述べた後、「個人的な想いを語ってすまない」との記述を読んだ時である。この本、著者の好みがむやみに述べてある。なんでこんなところになって謝っているのか。
コーラが好きだ、コーヒーが好きだ、走るのが好きだ、スギ花粉症だ、最後にはお金が好きだ、まで出てくる。紙数がないのだからもっと経済学の説明をすればよいのに思った。この著者、会話となると自分のことばかり喋っている人?と思ってしまった。
思うに著者は大学の教師であり、講義の際、自分の経験や好みから入ると、学生は教師に親近感がわくし覚える気になる。教育上の最適な戦略なのであろう。
しかし著者と面識のない、活字の上だけで知る読者にとって、著者やその親の好みなんか興味ない。それが上記の文を見て爆笑した。著者はアメリカで勉強したので、何よりも笑いをとることが重要、の精神を学んだのであろう。
最後に、索引がついているので使いやすい、と付け加えておく。
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