日本思想史の代表的概論とされている書の増補版である。
日本思想史に関心を持って読んだのだが、あまり感心できなかった。まず第一に本書は思想史となっているにも関わらず、歴史そのものの記述が多すぎる。思想史なのだから、思想の説明に必要な限りの歴史を書けばよい。歴史から思想が出てくるからまず歴史を書き、それから思想を記述する、というつもりなのだろう。ただこれでは歴史にページをとられ不必要に長くなるか、思想の説明が少なくなる。歴史書など山とあるから、わざわざここで書かなくても良い。更に呆れるのは最初にある増補版刊行のための文で、天皇が生前退位したとか、新型コロナが流行ったとか、更にはGDP増加率が減少したとか、そんな記述がある。思想史は現代まで書く必要はない。せいぜい近世までと言ったら少ないか、やはり明治への変革期の思想は必要だろうから、明治憲法と教育勅語くらいまでだろう。戦後の記述など全く必要ない。一番驚いたのは、事項索引がない、ということである。人名・神仏名索引と文献・資料名索引はあるが、事項索引がないのである。これでは全く使い物にならない。
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