2024年8月13日火曜日

『内田百閒 ちくま日本文学』 2007

夏目漱石に師事した小説家、内田百閒(明治22年~昭和46年)の作品集を集める。短編及び随筆の類が収められている。短編に満たない掌篇というほどの作品が結構ある。

短編は漱石の『夢十夜』に入っている話のような作品が多い。この集のうち特に有名な作品は『サラサーテの盤』(昭和23年)だろうか。鈴木清順の映画『ツィゴイネルワイゼン』の元になった。映画は見ていたが、この小説は初めて読んだ。映画だから色々膨らませているが、確かに本小説にある内容が映画で使われている。この集に『東京日記』(昭和13年)という比較的長い作品があるが、23篇の随筆から成り立っている。あと著者は旅行好きだったそうで『特別阿房列車』(昭和26年)は東海道を東京から大阪まで行く旅行記である。

それにしても内田百閒という名は旺文社文庫に入っていて名を知ったのだが、昔はおよそ文学全集に入るような著作家ではなかった。それがこの「ちくま日本文学」を再編集して30巻にしたときは一番初めが内田百閒集となっている。評価、好みというものは変わるものである。

0 件のコメント:

コメントを投稿