2023年4月18日火曜日

デフォー『ロビンソン・クルーソー』  The life and adventure of Robinson Crusoe 1719

ロビンソン・クルーソーが孤島で生き残るため奮闘する、という筋は全く読んでいない人でも知っている。昔から子供向きの本として有名で、読まれてきた。実は本作を読んだのは初めてである。そして思った。これは子供向きの本でなく、大人が読むべき本である。

本書は孤島での生き残りをかけた物語だけでない。更に経済人を描いたという言い古された評、この理解も十分でない。経済学者が都合のいいように言っているだけである。本書は人生を考え直させる書である。特に指摘したいのは孤島生活が前半と後半に分かれる点である。前半は一人だけで生き残りを図る、本書のイメージ通りの話である。この部分は、大人になって読むとご都合主義というか難破船から必要なものを全部持ってこられた、うますぎると気になるところもある。

後半になると「社会」の話となる。一人で生き残りをかけた生活をしてきた時は色々考えても内面の思索、いかに一人で実行するかの問題である。ところが後半になって、人食い人種の野蛮人の存在を身近に知ってからは社会の話になる。フライデーや他の者と行動するよりもっと前からである。つまり野蛮人との接触の可能性を知ってからのロビンソン・クルーソーの思索は前半と異なる。自分しかいないと思っていた時の思考や反省は全く個人内部のものである。しかし他人との接触を考えて、色々対策を考える、これは社会人そのものである。18世紀の西洋の小説であるから、差別意識など気になるかもしれないが些細な話であり、それより読んでいると色々考えさせられるのである。人間が全く他人との接触を断たれた場合と、社会を作って生きていく、この対比を鮮やかに描いた小説である。

ルソーが『エミール』でエミールの教育に望ましい本として挙げたのがたたったか、子供向きの本として思われてきたのは残念である。そういえば『ドン・キホーテ』も昔は子供の本扱いだったが、今では最高の小説に挙げられる場合もあるのに似ているかもしれない。

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