著者は経済企画庁の官僚から大学教授になり、日本経済研究センターの理事長を勤めた。本書は日本の戦後の高度経済成長時代の様子、その要因を解明しようとした著書である。
高度成長によって日本人の生活は著しく向上し、豊かになった。生活改善は高度成長のもたらした最も目につく成果である。生活の向上ぶりを描けば興味ある読み物になる。文庫で出ている吉川洋や猪木武徳の著作は読んでいて面白い。それに対して本書は完全に経済に焦点を当て、なぜ高度成長が可能となったか、その様相はどのようであったかを分析している。そういった意味ではやや硬い著作である。しかし最も解明が必要とされている点でもある。
本書は昭和50年代半ばに執筆されているので、成長の枠組みとしてハロッド=ドーマーを使っているとか、マルクス経済学的な用語が出てくるとか古臭い点もある。ただ著者が昭和8年生まれで終戦の年に12歳であり、昭和30年には22歳であったから、戦後高度成長と共に成長し興味を持って時代を眺めた。今の人間が書くなら資料によるしかない。それを自ら見聞き経験した同時代史なので説得力ある書となっている。(日本評論社)
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