エコノミストとして名高い著者が平成の日本を振り返った経済論。内容は第1部「バブルの崩壊と失われた20年の始まり」第2部「金融危機とデフレの発生」第3部「小泉構造改革と不良債権処理」第4部「民主党政権の誕生とリーマン・ショック」第5部「アベノミクスの展開」に分かれる。
こうしてみると平成の経済は、昭和の戦後が「成功物語」であったのに対し、随分苦難の道をたどってきたと分かる。始まりからしてバブルの崩壊であり、日本の成長神話を失わせた。本書に具体的な経済の経緯は書かれているので、そもそも的な感想を述べたい。
バブル崩壊でかなり日本経済は悪化した。しかしこれは一時的な現象であり、早晩元の成長軌道に戻るという発想が当時は強かったと思う。財政政策や金融政策を適切に行なえば成長は戻るはずだ、と思われた。いや経済が悪化していれば、何も政策をうたないわけにはいかない。成長哲学如何に関わらず、財政金融政策はしなければならない。財政政策は結果的に政府赤字を増大させた。それほど効果がなかったという意見に対し、しなければもっと悪化したと反論が来る。検証のしようがない。
21世紀になってからはデフレ不況が生じ、まずデフレを止めよと言われ始め、専ら経済政策は金融政策に特化した。これまでの金融政策が妥当であったかどうか、まだ評価の議論の時期ではないかもしれない。しかし当初の期待ほどの成果は挙げているように見えない。
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