イギリス人のウィリアム・ベックフォードがフランス語でものした『ヴァテック』の同名の主人公は9世紀の実在のカリフである。原語に近い発音はワーシクという。この千夜一夜物語ばりの幻想譚は、本能の赴くまま自己本位に生きたヴァテックが破滅に陥るまでが、正編であり、訳本「バベルの図書館」シリーズでは(上)となっている。
異国からやって来た容貌魁偉の男はヴァテックに剣を与える。地下の国に行けば暴対な富が得られると教える。ヴァテックは部下たちを引き連れ、冒険の旅に出る。多くの災難に会い、部下らを失う。美少女に会い、すっかり惚れ込んだヴァテックは自らのものとして婚約者から奪い去る。ヴァテックの母、皇太后は権力を持ち、ヴァテック以上に悪の権化だったが、ヴァテックも皇太后も最後には地獄に堕ちる。
0 件のコメント:
コメントを投稿