小説家の村上春樹が指揮者の小澤征爾に対して行なったインタビュー、というのは不正確で小澤と村上の対談である。対談はレコードを聴きながら、演奏に実際について村上が小澤に質問する。またレコードに詳しい村上が、過去の録音を再生して小澤と議論するなど。
章(対談の回)を見ると、第1回がベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を巡って、第2回がカーネギー・ホールのブラームス、第3回が1960年代に起こったこと、第4回がグスタフ・マーラーの音楽を巡って、第5回がオペラは楽しい、第6回は決まった教え方があるわけではない、その場その場で考えながらやっている、となっている。更に、厚木からの長い道のりという付録がある。
指揮者である小澤に、愛好家といえ素人の村上が質問をして小澤が答えるところなど、音楽の専門家は回答に工夫をこらそうとしている。専門家同士だったらまた違った展開になっただろう。最後の方は、小澤が主宰していた、若い音楽家たちを訓練する集まりに村上が招かれ、その印象を記録している。更に付録はジャズピアノ奏者の大西順子と小澤の共演で『ラプソディー・イン・ブルー』が実現するまでの経緯が書いてある。音楽好きなら楽しめる本であろう。
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