2019年9月8日日曜日

前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』光文社新書 2017

著者は昆虫学のポスドクで自分の地位を得る論文を書くため、アフリカのモーリタニアへ渡る。倒しにではなく、バッタネタの論文を書くためアフリカへ、が正しい題である。
バッタの大量発生すると作物を食い尽くし、大被害を与える。(戦前の映画『大地』(パール・バック原作)に蝗の大群が出てくると子供の時、聞いたことを思い出した)そのため、アフリカのモーリタニアにはバッタ対策の研究所があり、そこへ赴任するのである。
何とかバッタを捜しに車で回るが、中々見つからないなどの苦労談が語られる。バッタ自体の研究書ではない。
モーリタニアという名前以外に知らなかった国についてなじみになる。入国には役人が賄賂を請求する、時間を全く守らないなど他の途上国でも聞かれたような話がある。アフリカが成長しないわけが分かる。
本書は著者がいかに苦労して栄光を勝ち取ったかの成功物語である。だからこそ大ベストセラーになったのであろう。決して科学的知見が増えるといった類の書ではない。

本書の意図とは関係ないが、最も気になった箇所を挙げる。共に経済に関する事柄である。
p.84に「日本から外国に物資を送るには「関税」なるものがかかることを初めて知る。・・・送るには税金を支払わなくてはならない。」とある。日本からの輸出税?輸入税ならわかるが意味不明であった。
もう一箇所は、日本で物乞いを見かけないのは「最近は物騒なので見ず知らずの他人に誰が恵んでくれようか」(p.95)という記述。モーリタニアでは物乞いが多いのは救いの手を差し伸べてくれる人がいるから、が著者の理解である。モーリタニア人は人情がある、それに比べ日本は物騒な国で日本人が不人情のため?
日本なら文句を言わなければ仕事はある。全く仕事が出来ず、親族もいなかったら生活保護が受けられる。だから物乞いがいないのである。(制度が整っていなかった昔にはいた)
この著者は当てずっぽうで適当なことを書く人と思った。

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